調達購買部 調達推進課長 谷杉様(写真左)
企業紹介
企業理念は「病気と苦痛に対する人間の闘いのために」。1717年の創業以来、300年以上にわたり患者さんの健康を願い邁進する中で、1968年に当時“夢の物質”と呼ばれたプロスタグランジンの全化学合成に企業として世界で初めて成功、2014年に世界で初めてがん治療の新たな選択肢を提供する抗PD-1抗体「オプジーボ」を発売しました。これら2つの大きな功業を経て、現在も新薬の創製に向け、たゆまぬ挑戦を続けています。
課題
- 調達購買のルールと、調達購買システムの業務プロセスが一致していない
- 調達購買システムを更新し、コストの適正化や業務改善を進めたい
効果
- ほぼ全ての間接材(物品・サービス購買)が調達購買のルールを遵守した業務プロセスに。社内でも意識改革が起こり、ガバナンス強化が実現
- カタログ登録商品の見直しや社内の稟議システムとの連携で、購入コストと業務コストの両面を最適化
調達購買システムを自社用にカスタマイズ
元々、調達購買にどのような課題を抱えていらっしゃったのでしょうか。
まずシステム面においては、新システム導入前までは約20年前に自社開発した購買システムを使用しておりましたが、相見積り取得の機能や調達購買の社内規定ルールを反映したワークフローへの更新が喫緊の課題になっていました。また、従来のシステムで購入できる商品やサプライヤが限定的で、サプライヤとの連絡もアナログで業務の生産性にも課題がありました。調達購買のルール自体についても、より詳細に規定にしたうえで、社員に浸透させることが求められていました。
そうした課題を、新システムの導入で解決したいと考えられたのですね。
システム刷新の検討着手と併行して、現在私が所属する調達購買部が新設されました。改めて社内ルールを設定し直しつつ、そのルールに添ったシステムを開発することでガバナンス強化を図ろうというのが、今回の新システム導入の最大の目的です。私自身、調達購買に携わることが初めてだったので、世の中にどのような購買システムがあるのかを調べるところから始め、最終的に運用会社を選定するまでに約1年の時間を要しました。
「トライアンフ21」を選ばれた決め手をお聞かせください。
当社の最重要課題は試薬の法規制対応だったのですが、「OffSide」では試薬管理システムや稟議システムとの連携実績があると伺ったこと、そして社内ユーザー・サプライヤの双方が同一システムで業務を行えることが、トライアンフ21さんを選ぶ一番の決め手になりました。また、パッケージ商品のため基本的な購買システムの機能がほぼ備わっていることに加えて、要望に応じてフレキシブルにカスタマイズできる点も魅力的でした。
開発にあたりこだわったポイントはどこでしょうか。
まずは試薬の法規制対応の点です。弊社の試薬管理基準が同業他社に比べても厳しく設定されていますので、試薬購入時の各部署のルールを言語化し要件を定義するところは非常にこだわったと記憶しています。本社部門のほか、国内の研究所や生産拠点など全国計7拠点を巻き込んだ非常に大きなプロジェクトで、要件定義の際はトライアンフ21さんの当時の開発メンバーの方々にも、研究所や各拠点に何度もご足労いただいて議論を重ねました。
また調達購買のガバナンスを強化するカギである稟議システムとの連携についても、非常に多くの協議を重ねました。どんなデータを連携させるのか、仕様はどうするか、承認フローをどう設計するのが良いか等々・・・。これらは社内のルールづくりと同時進行で進め、特に稟議関連は、要件定義の中で「こういったルールも必要じゃないか」という多様な意見が噴出した代表例で、苦労したことを思い出します。
さらにガバナンスをより社内へ行き渡らせるために、物品購入に加えて各種サービスの支払いを新システムに集約した点も、こだわったポイントですね。例えば業務委託などの発注の仕方や支払い方法等について協議を重ね、システムを一部カスタマイズしていただくことで、現在はとても便利にユーザーに使ってもらえています。
開発中の印象深いエピソードを教えてください。
特に印象に残っているのは「コストの適正化」に関する作業です。システムの準備に当たって、あらかじめサプライヤさんと取り決めた商品の単価を登録した弊社専用カタログを作るわけですが、この機会に最安値の商品を登録して、コストの適正化を図ろうということになりました。過去の購買データから発注頻度の多い商品をリストアップして候補サプライヤを探し、相見積もりを出してもらって、結果を比較検討する、という作業を行ったのですが・・・。研究所や工場で使う試薬や資材って、すごく品目数が多いんですよね。さらに、弊社の場合は7拠点分のカタログを作り分ける必要があったので、本当に膨大な時間がかかる作業となってしまいました。自社だけではとても対応できなかったので、トライアンフ21さんにもかなり多くのパートを担っていただきました。ご協力がなければ、導入当初からコストの適正化を図ることはできなかったと思います。
システム導入で社内のガバナンス意識が一新
オリジナル購買システム「OffSide」の導入は2020年7月のことでした。
導入後、社員の調達購買プロセスに関する理解が進んだことで、ガバナンス強化の効果が定性的に表れています。新システム導入以前の課題のうち、システムで改善できるところは、大半を改善済みです。やはり、改めてルールを作り、そのルールを遵守できるようなシステムも構築する、ソフトとハード両面で整備したからこその成果であったと考えます。「OffSide」導入は、本来の調達購買のプロセスのありようについて社内に発信する絶好の機会にもなりましたので、社内全体で大きな意識改革ができたのではないかと思います。
コストの適正化も、前述したカタログ準備作業や相見積り機能によって実現できつつあります。また稟議システムと連携したことで、ガバナンスの強化のみならず業務効率化につながっているという声もユーザーから聞こえてくるようになりました。今後システムに慣れてさらに機能を使いこなすうちに、一層効率化が進み、創出した時間をコア業務に充てられる場面が増えることを期待したいです。
今後、トライアンフ21に期待することは何でしょうか。
「OffSide」は多数の社内システムと連携しているため、パフォーマンスが遅いことが以前から課題となっています。少しずつ改善はされていますが、今後も引き続き課題解決に向けて期待したいです。もう1点、弊社では現在、アメリカでの上市を目指しておりまして、ボストンに拠点を構えて準備を進めています。その成功を足がかりに、将来的には欧州にも進出したい考えです。また先日、アメリカのバイオ医薬品企業を買収することで新たな研究拠点を設けましたので、そこの研究開発力を高めつつ、弊社グループのパイプラインを徐々に増やしていきたいと計画しています。そのため海外での間接材の調達購買システムのニーズが今後高まることが想定されます。将来的なお話になりますが、トライアンフ21さんのビジネス展開やネットワーク等からのご助言、ご支援を頂戴できますと幸いです。
※取材日時:2024年6月